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福岡高等裁判所 昭和62年(ネ)90号 判決 1987年5月28日

控訴人 岡崎武二

被控訴人 松永石油ガス有限会社

右代表者代表取締役 松永浩

主文

原判決を取り消す。

本件を熊本地方裁判所御船支部に差し戻す。

事実

控訴人は、「原判決を取り消す。被控訴人は、控訴人に対し、金一三八万八六六八円及びこれに対する昭和六〇年七月六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」旨の判決並びに給付請求部分につき仮執行の宣言を求め、被控訴人は、「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。」旨の判決を求めた。

当事者双方の主張並びに証拠関係は、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

理由

職権によって調査するに、本件記録によれば、原判決の言渡期日である原審第七回口頭弁論調書には、作成書記官の記名捺印はあるものの、立会書記官の氏名の記載がないことが明らかである。

ところで、書記官の立会に関する事項は、口頭弁論の方式に関する事項であり、口頭弁論調書中の立会書記官の氏名の記載は、調書の形式的記載事項とされ(民訴法一四三条一項二号)、右の方式に関する規定の遵守は口頭弁論調書によってのみ証明できるとされている(同法一四七条)。したがって、立会書記官の記載を欠く口頭弁論調書をもっては、当該期日に書記官の立会がされた事実が証明されず、当該口頭弁論調書は、その期日調書を作成する権限を有する者によって作成されたものということができないから、その効力を認めるべきではない。

そうすると、本件においては、原判決が適式に言い渡された事実を証明することができないことになり、原判決は判決言渡手続に違法があり、取り消しを免れないところ、右手続の瑕疵は重大であるから、本件を原審に差戻すべきである。

よって、民訴法三八七条、三八九条に従い、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 高石博良 裁判官 川本隆 堂薗守正)

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